Numberの記事より

とても客観的な内容で、特定の選手ばかり書かずに色んな選手について書いてあります。選手への愛情やリスペクトを感じる素敵な記事ですね♪

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「超人的強さの羽生が再び魅せる!今季の全日本は歴史的大会へ――。」
12月25日から、札幌の真駒内セキスイハイム・アイスアリーナで第84回となる全日本選手権が開催される。この大会はシーズン後半の、ジュニア世界選手権、四大陸選手権および世界選手権の代表選考会でもある。

羽生は超人的な強さを維持できるか。

 男子シングルは、今シーズン世界選手権枠が2枠に減ってしまったという厳しい現実での選考会となる。

 そんな中、台風の目はやはり羽生結弦である。

 このところNHK杯、GPファイナルと世界記録を更新し続けてきた彼が、今回はどのような演技を見せてくれるのか。過去2試合で見せたような超人的な強さを、維持できるのだろうか。

 羽生がショーやエキジビションで見せてきた、まだ誰も試合で成功していない4回転ループをプログラムに入れるかどうか、という可能性についても注目されている。だがGPファイナルの会見で聞かれたときは、「将来的には」と言いながらも、「ただそれが今やるべきことなのかどうかは……」と言葉を濁した。

4ループに挑む可能性は……。

 彼の言うように、現在トップを独走状態の羽生にとって、これ以上リスクを上げる必要性はない。もっとももし彼自身が挑戦のために試合で試す気になったとすれば、SPの結果しだいでは全日本選手権のフリーで見せる可能性もゼロではないだろう。

 だがこれからシーズン後半を控えている彼にとって、体調のコンディショニングは大事なことである。いたずらに煽り立てて怪我をするようなことがあってはならないと思う。

 たとえ4ループに挑まなくても、羽生がノーミスの演技を繰り返せばどのくらいの点が出るのか興味深い。どこの国でも国内選手権は、ISU主催の大会より得点は高い目に出るのが恒例である。国内大会の得点はISUの公式記録には残らないものの、歴史に残るような戦いが見られるかもしれない。

世界選手権代表の二枠目は誰の手に?

 今の羽生が世界選手権の代表を逃す、ということは考えにくい。だから現実的に言って、二枠目を残りの男子で競うことになる。

 候補の筆頭は、今シーズン好調なシニアGPデビューを飾り、GPファイナルで3位に食い込んだ宇野昌磨だ。バルセロナでほぼノーミスで滑りきったフリーでは、ISUジャッジから5コンポーネンツで9点台も獲得した宇野。18歳になったばかりの彼が、札幌ではどこまで羽生に迫るだろうか。

 また今シーズンGPファイナルに到達した村上大介は、バルセロナでのフリーでは本領を発揮できなかった。「全日本では絶対にノーミスの演技をしたい」と語った村上。悔しさをバネとしてこの2週間トレーニングしてきたであろう彼が、札幌ではどこまで実力を見せてくれるだろうか。

 スケートアメリカで怪我の影響もあり10位と不調なスタートを切るも、NHK杯で3位と持ち直してきた無良崇人も、全力を尽くして表彰台を狙ってくるに違いない。

 またジュニアGPファイナルで3位だった山本草太は、西日本大会からフリーで二度の4回転をプログラムに組み込んでいる。バルセロナでは成功しなかったが、全日本でどこまで調整してくるかに注目だ。

 NHK杯で健闘した田中刑事、今シーズン怪我でGPシリーズ中国杯に出られなかった小塚崇彦らからも、好演技を期待したい。
浅田真央と宮原知子ら若手たちの戦いとなる女子。

 一方女子は、男子より予想が困難な戦いになる。バルセロナGPファイナルでは、フリーの日に胃腸炎で体調を崩し6位に終わった浅田真央が、どこまで調整をしてくるかにすべてがかかっているだろう。

 10月のジャパンオープンでは素晴らしい「蝶々夫人」を滑りきり、1位だった浅田。だがその後、中国杯、NHK杯、そしてGPファイナルと、フリーではジャンプミスが重なってきた。技術どうこう以前に、彼女の気持ちの中での自信の揺らぎというものが影響しているのかもしれない。

 「やらなきゃな、という気持ちが強すぎるのかも」とバルセロナで口にしていた浅田。体力的には以前よりも疲れが翌日に残ると言うものの、今の彼女の滑りには、若かった当時にはなかった大人っぽい味わいが加わってきている。

 表現の成熟と技術の維持、という難しいバランスを男子以上に問われる女子。今の浅田真央にしかできない滑りを、存分に見せて欲しいと思う。

演技の安定性で抜き出ている宮原。

 バルセロナのファイナルでは、初出場で2位に入賞した宮原知子。NHK杯、GPファイナルと通してミスらしいミスをしていない彼女の安定性は、驚くほどだ。

 どのジャンプも急くことなく着実に、きっちりと同じタイミングで着氷をする。

 カルガリー五輪金メダリストのブライアン・ボイタノを、振付師のサンドラ・ベジックが「ボードからセンチ刻みのほぼ同じ場所で、同じように何度もジャンプを着氷できる選手だった」と評したことがあるが、宮原にも同じような能力があるのではないか。そう思わせるほど正確な技術は、誰よりも練習熱心という彼女の努力の賜物に違いない。それと同時にSPの「ファイアーダンス」、フリーのリストともに、滑り込むほどに表現力が増し、シニアらしい存在感のある演技を見せるようになった。タイトル保持者である彼女が、どのような戦いぶりを見せてくれるのか、楽しみである。

村上佳菜子、本郷理華らの巻き返しに期待。

 GPファイナル進出を逃した村上佳菜子、本郷理華らにとっては、全日本選手権がシーズン後半に向けての巻き返しのチャンスである。

 村上佳菜子はスケートカナダと、SPのみで中断されたエリック・ボンパール杯ではどちらも4位と惜しいところだった。メダルは逃したが、演技の内容的には決して悪いできではなかった。鍵となるのは、このところミスが続いている2アクセルをしっかり降りることだろう。

 今シーズン、鈴木明子に振付を依頼して一皮剥けたように見える本郷理華には、中国杯で見せたような伸び伸びとした演技を期待したい。これから彼女が五輪を目指して世界で戦っていく上で、今季の代表は絶対に逃したくないところであろう。
才能あるジュニアたち。

 その一方で、現在の日本には才能あるジュニアたちがひしめいている。

 全日本ジュニアの女子は、驚くばかりのレベルの高さだった。この大会でのトップ6選手が全日本シニアに進出する。

 ジュニアの戦いを勝ち抜いた14歳の樋口新葉は、昨年の全日本シニアで3位だった。ジュニアGP大会で見せた3ルッツ+3ループのコンビネーションを成功させ、ノーミスの演技を滑りきることができれば、今年も表彰台に上がって来る可能性は大である。

 またジュニアGPファイナルでは特にSPが素晴らしく、3位入賞した本田真凜。技術と表現力の両方をバランスよく兼ね備えた彼女は、見るたびに成長しているこれからが楽しみな選手だ。同じくジュニアGPファイナルに進出した白岩優奈、将来が期待される青木祐奈、スケートカナダで3位入賞した永井優香など若手勢には、この大舞台を貴重な経験の場として精一杯の演技を見せて欲しい。

(「フィギュアスケート、氷上の華」田村明子 = 文)
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